こちらのTolkien Writing Dayに参加しています。
http://bagend.me/writing-day/『王の帰還』の終盤においてフロドがこれまでの物語を書く場面における、『五人のホビットの冒険』という言葉が印象的でした。
Adventures of Five Hobbits.
さて、ここでいう『五人』のホビットとは一体誰なのでしょうか。普通に考えるならば指輪物語の主要人物であるフロド・サム・メリー・ピピンとそしてホビットの冒険の主人公ビルボなんでしょう。そうなのだと思います。けれど私はどうしても、『五人のホビット』という言葉からはフロド・サム・メリー・ピピンの四人に加えフレデガー・ボルジャーを連想してしまうのでした。
フレデガー・ボルジャーとはフロド達の親戚であり、親しい友人の一人です。ホビット庄暦1380年の生まれで、フロドより12歳年少、メリーより2歳上、ピピンより10歳上、サムとは同い年。彼はでぶちゃん(Fatty)の愛称で呼ばれ、フロドがホビット庄を離れるにあたってサム・メリー・ピピンとは違いホビット庄に残りフロドがそこに住んでいるかのように見せかけるという役目を負いました。映画ではカットされたホビット庄の掃蕩においてはレジスタンスのリーダー役を務めています。(後に、フレデガーの妹エステラはメリーと結婚しています。)
フレデガー・ボルジャーはメリー達と共に、フロドの本意を知りながら知らないふりをして、堀窪の新しい家までついてきました。章タイトルである『正体をあらわした陰謀』とは、彼らのこの茶目っ気ある行動の事です。しかしフレデガーが他のメンバーとは違い古森に入る事を怖れその場に残りました。フロドがこの家で暮らしているように装い、またガンダルフにフロドの言葉を伝えるという役割です。しかしそれもまた、黒の乗り手と対峙する可能性のある危険な役目であったのです。現にナズグル達は家までやってきて、フレデガーはやっとの事で逃げ出しました。
そしてホビット庄の掃蕩。身近な居場所を荒らされる長い戦い。指輪を捨てる旅とはまた違う、過酷な戦いでした。フレデガー達の努力の甲斐もありフロド達にとっての帰るべき場所、ホビット庄は失われずに済んだ。フレデガーは旅に出なかったけれど、確かに違う場所でフロド達を支えていたのです。すっかり痩せ衰えたフレデガーを見て、自分達と一緒に来ればよかったのにと言うピピンと、大きくなった彼の姿に驚くフレデガーとの会話が微笑ましいです。
フレデガーだけでなくサムとフロドコンビ、メリーとピピンコンビも旅の途中で離れ別行動をとることになりましたが互いの身を案じていました。
友情とひとことで言っても様々な形があると思うのですが私が指輪物語を通して特に強く感じる友情の形は、離れていても心はいつも繋がっているという種類のものでした。
だからフレデガーはフロド達と離れホビット庄に残るも意識の上ではずっと繋がっていたし、そして指輪が結ぶ旅の仲間達も永遠の友情で結ばれながらも解散するのです。お互いが別の道を行っても友情は不変。西へ旅立つフロドとガンダルフも、ホビット庄にはもう入れないアラゴルンも、死んでしまったボロミアも。離れていても、きっと友情は続く。
それは悲しい別れではないのです。だってそれは友情だから。
『人間の友』と呼ばれたエルフの公子フィンロド・フェラグンドが、笑ってベレンに別れの言葉を告げたように。
愛が寄り添い合い共に生きる事を願う絆の形ならば、友情は別の道を行ってもそれぞれを想う種類の絆なのではないでしょうか。常に側にいる事はできなくとも、どんなに遠く離れ、たとえ二度と会う事がなかったとしても。そんな友情の形。
PR