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アガートラーム

指輪物語(ホビットの冒険、シルマリルの物語)とその世界、人物についての萌え語りブログです。原作や映画の感想の他、二次創作的妄想な話題を含む予定。

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有期限の幸福……死が二人を分かつまで

こちらのTolkien Writing Dayに参加しています。
http://bagend.me/writing-day/
少しは人様にお見せできる文章を意識して書くべきかと思いつつも、でもやっぱりいつも通りかも。

私はサムワイズ・ギャムジーが好きです、そして特にその妻ローズ・コトンとのカップルが好きなのです。映画の『王の帰還』での二人の結婚式はまさに小さな、そして慈しむべき大団円がそこに描かれとても印象的でした。アラゴルンとアルウェンの盛大な様子とはまた別の。
そう、サムとロージーはアラゴルンとアルウェンとは違う。二人は同じ種族なのだから。ただのホビット同士の、ありふれた、だからこそかけがえのない小さな幸せです。二人は同じ種族の、ご近所同士の、何という事のないカップルであり、本来ならばそこには何ら障害などなかった筈です。種族の違いと彼の背負う重責ゆえに結ばれるのに長い年月を費やしたアラゴルンとアルウェンとは違う。そこには語り継がれるような悲劇などない……その筈なのですが。

サムの誕生日は4月6日だと伝えられているようです。4月6日とは宴会場に初めてマルローン樹の花が開いた日であり、エルフの新年とされる日。指輪物語追補編によればホビット庄では3月25日(指輪棄却日であり、サムの長子エラノールの誕生日)や9月22日(フロドとビルボの誕生日)を祝ったとされる記録はないようですが、4月6日については休日にして大いに祝ったそうです。
ロージーの誕生日は不明ですが、命日はホビット庄歴1482年の夏至の日です。夏至は作中においてはアラゴルンとアルウェンの結婚式の日であり、また第一紀においてトゥーリン・トゥランバールとニエノール・ニーニエルが結婚した日でもあります。(サムとロージーの結婚は5月1日。)夏至とは一年において最も日照時間が長い日ですが、それは逆に言えば、そこからまた昼の時間が短くなっていく境目の日でもある。その夏至の日がロージーの命日であるという事実はどこか象徴的なものに思えます。太陽が巡り(正確には地球が太陽の周りを公転し)、日照時間が移り変わりゆくという一年の流れは現実世界においても死と再生のシンボルとされるのですから。不死を捨て去ったアルウェン、相手を兄と知らずに結婚したニエノールにとって結婚は死へのカウントダウンであると考える事もできるでしょう。そしてロージーはまさに夏至のその日に死ぬ。

ロージーの死後、その年の9月22日……サムはかつての主人であるフロドとビルボの誕生日に西へ向けて旅立つのです。サムの長女エラノールがそれを見送り、彼女がサムから受け取った赤表紙本は『西境の赤表紙本』と呼ばれ、王の祐筆フィンデギルをはじめとする写本作家による写本を介して後の世に伝えられていきます。
何の変哲もない、ただのホビット同士の夫婦であるサムとロージーから一抹の寂しさを感じるのは、多分二人の時間がロージーが先に死ぬまでの有期限の幸福だったからです。幸せは永遠ではない。それはアラゴルンの死の時におけるアルウェンとも共通します。
ロージーの死、描かれなかったその時に二人の間に会話があったのだとしたら、それは果たしてどのようなものであったのでしょうか。
ロージーの死後サムは「最後の指輪所持者として」西へ渡りました。死の床にあってロージーからの遺言があったのなら、やはり行ってあげてと彼女が言ったのでしょうか。一年以上の時間を経てやっと帰って来たサムに会えた時にも、ホビット庄の掃討のさ中できっと不安であるにも関わらず、フロドの所へ行ってあげてと言えるような気丈な彼女なのだから。
ロージーはホビット庄歴1384年生まれなので、亡くなった時の1482年には98歳になる計算です。一方サムは諸説ありますが1380年生まれというのが有力。サムとロージーはおそらく四歳差。
サムがロージーよりも4歳年上である事を鑑みれば、本来ならばサムの方が先に亡くなる可能性も高かったのでしょう。ロージーが先に亡くなりさえしなければ、サムは灰色港に向かう事はなくホビット庄にて一生を終えていたのではないでしょうか、多分。
サムとロージーはまさに『死が二人を分かつまで』限られた時間を幸福に過ごしたのだと思います。13人の子供をもうけ、七度庄町の職を務め、時には波風立ちながらも楽しく賑やかに。きっとこの世で考えられる限りの最上の幸せな日々を。幸せな、しかしただの幸せと呼ぶには何処か切ない物語。ホビット庄歴1419年に二人が再会してから1482年にロージーが亡くなるまでは63年弱。長いです、ホビットの平均寿命基準では十分に長いです。しかしより長い時間の流れを意識してしまうと、それはほんの瞬きの輝きに見えてしまう。

考えてみればアルダの長い長い時間を俯瞰するトールキン作品の作中において、幸せはどれも有期限の幸せではないでしょうか。友情であれ、恋であれ、結婚生活であれ。限られた時間をそれゆえにせいいっぱいに生きる姿はあらゆる場面で共通しています。
幸せの有期限さに数少ない例外があるとすれば、その一つはベレンとルーシエンなのでしょう。エルフとマイアの娘であったルーシエンがベレンを愛し、人間の運命を選んだがために、二人は最後手を取り合って誰も知らない所へ旅立って行ったという。
願わくば、ホビットがその発生において人間と同じであり同じ運命を与えられているのならば。西の地に辿り着いたサムがその生を終える時、向かう先はロージーがいる場所でありますように。誰も知らない人間の運命がこの世の外側にあるというのなら、そこで二人がまた会えますように。
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