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アガートラーム

指輪物語(ホビットの冒険、シルマリルの物語)とその世界、人物についての萌え語りブログです。原作や映画の感想の他、二次創作的妄想な話題を含む予定。

原作のエルフ王の賢明さについて

私見ですが、シルマリルリオン全体を貫いている教訓が一つあると思っています。それは、「たとえ動機が正しかったとしても、殺害はそれを行った者にも不幸をもたらす」という事。
古くはフェアノール一党によるアルクウァロンデの最初の同族殺害に始まり、ドリアスとシリオンにおける二度目、三度目の同族殺害。それが行った者に対しどういった報いをもたらしたかは目にも明らかだと思うのです。
エオルを処刑したゴンドリンはやがて滅亡を迎えます。
あるいは、ドリアスにおいてシンゴルの世継ディオルが不幸な最期を迎えたのも、動機の正しさに関わらず暴力は正当化されない事を示すものではないでしょうか。少なくともディオルには、シルマリルを渡し戦争を避けるという選択肢が与えられていたのですから。英雄ベレンとルーシエンの忘れ形見である彼に対してすらも、物語は冷徹とも言える程に公正な筆致を持ってその行く末を描いているように見えます。
指輪物語においても、ホビット庄の掃蕩の場面でフロドは言いました。絶対にホビットを殺してはならないと。
少なくとも、中つ国の自由の民と見做された者達の間では、作中においてたとえそれがどんなに正当と思われる動機によるものであっても、殺害は喜ばしい結果をもたらさないように思えます。

そして『ホビットの冒険』における「エルフ王」は、「遠い昔このエルフ達は、あるドワーフ族と戦争をした」のです。ドワーフと森エルフは生来の性質のみならず過去の不幸な歴史によっても不仲であり、お互いを好いてはいない関係でした。
それでも彼は、トーリン一行を捕えはすれど危害は加えなかった。トーリン達を厳しく尋問しても、怒っても、「食べ物を」「たいしてよいものでないにしてもどっさり」くれたのです。蜘蛛をペット扱いしたバーリンの台詞にとても怒っても、それでも彼らにきちんと飲み食いさせるよう部下に命じました。このエルフ王……スランドゥイルは、たとえ相手が敵対する種族の不法侵入者であっても命を重んじ公正に扱おうとする人なのだと分かります。
スマウグによってトーリン一行が命を落としたと思った時にも、「運は誰にでも恵むわけではない」との台詞は一見冷たくも見えますが、しかしけして「ざまあみろ」的な言葉は投げかけていません。
後にスマウグが斃れバルドら湖の町の人間と共にエレボールへ向かう段になっても、彼は争いを避けようとします。
ダイン軍がやってきて、交渉が決裂したと思われた時、バルドはすぐにでもドワーフ達に戦を仕掛ける心持ちでした。それを止めたのがスランドゥイルです。「黄金をめぐって争いを始めるのはできるだけ控えたい」、と。これはどう考えてもかつてのドリアスでのシルマリルをめぐる二度の争いを指すものでしょう。あの時のドリアスは被害者の側だから悪くないと言い切ってしまうような、そんな一面的なものの見方をする人ではない事がうかがえます。
エルフ王のその態度はドワーフ軍の戦力を甘くみた結果と言えるかもしれませんが、それでも彼はギリギリまで和解の道を探ろうとした。個人的な感情を置いておいて、あくまで争いを避けようとした。実に賢明な人だと思います。エルフ王のキャラクターを考える上でこれは凄く重要な事柄だと思います。
そして、ドワーフとエルフ・人間連合軍との戦いは寸前にて回避されました。ボルグ率いるゴブリン(オーク)とワーグ軍が襲ってきて、共闘する事になったからです。一番槍をつけたのはエルフ軍です。それまで睨み合っていたドワーフ軍と自然に共闘し、守る事になるのです。両者が殺し合いに至る事なくこの共闘の展開に持ち込めたのは、最後まで争いを避けようとしたエルフ王の賢明さもあってのことではないでしょうか。
ラッパの音と共にトーリン一党が表門から駆け出し、戦場の空気が一変するあの躍動的な場面においても、興味深い点があります。ダイン軍のドワーフ達はもちろんトーリンを助けに向かう、湖の町の人間達の動きをバルドも抑えきれない。でもエルフ軍がトーリンの元へと向かう行動を、エルフ王が抑えようとしたような描写はありません。これはエルフ軍の大将である彼が、積極的にトーリンを助けたいと思っていた事の表れではないでしょうか?
そんなエルフ王のキャラクターが好きなのです。
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『ホビットの冒険』読み返し(『19もとの古巣』まで)

15章以降の所は読んでいて辛いので一つにまとめてしまいました。

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主にエルフとドワーフのコンビに萌えています。でもみんな好き。

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